おとしもの

3/6
前へ
/10ページ
次へ
「……どうしてそう、姫様は卑屈(ひくつ)になるのです。いつものように堂々となさっていればいいではないですか。幼い時のように、上からものを頼めばいいのですよ。アレをしろ、これをしろ……とね」 「誰のせいだと思ってるのよ!……え、何でわたくしの幼少期を知ってるのかしら?」 「さぁ、オレにはなんのことかサッパリ」 パチリとウインクを飛ばしながら舌をペロっとした彼は、悪戯っ子というより確信犯な青年(イケメン)というイメージだ。勝手な妄想だが。 「……あ、そういえばわたくし、この話をあなたにしていないかもしれないわ」 「え?なんの話ですか?」 「わたくしが婚約する人の話。何故このわたくしが婚約に乗り気なのか、その理由よ」 そう前置いて、わたくしは追憶する。 そう、それはわたくしがまだ幼かった頃の話――。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加