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「人はそうやってさぁ、すぐ会えるんだからって言っといて疎遠になっていくんだからな。俺そういうの嫌だぜ」
その言葉が嬉しくて、私だってそんなのやだよと言うとそうだろそうだろ、じゃあ引っ越すのやめようぜと無茶を言う。
「じゃあ引っ越してから一週間以内に会いに行くから」
「一週間じゃ遅い遅い。三日以内に会いに来いよ」
駄々をこねる彼女を可愛いと思う。
「じゃあお前、一週間以内に会いに来なかったら、約束破ったってことでこの桜の木の下に埋めちまうからな」
そう言って隣の満開の桜の木を手で彼女はぱんぱんと打った。
物騒な事を言ってるはずなのに、私はその言葉を嬉しいと思う。
「いいよ、じゃあ約束破ったら埋められてあげる」
本当だなーと言って、彼女はふざけて私の首に手をかけて弱く弱く力を入れる。
私は彼女の真っ白な首を見ながら同じことをしたいと思う。
彼女を苦しめたいと思わない、痛めつけたいとも思わない。
でも時々その真っ白な首をしめてしまいたいと思う。
それは彼女がしたように冗談ではなかった。
急に風が吹いて、桜吹雪が舞う。
彼女の桜色の髪がなびいて、つぶらな瞳をきゅっと歪ませて笑う。
お互いにこのまま首を絞めあってそのまま桜の下に埋まれたらいいのにと突拍子もない考えが浮かんだ。
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