0人が本棚に入れています
本棚に追加
終章 キス
「梔子さんの声、よく通って綺麗だと思う」
沢田君は私の顔をじっと見つめ笑いかける。
思わず涙が零れた瞬間、
「キャアア!」
沢田君が入ってきた扉に女子がいた。
「えと……高……高…」
「高山さん!」
「わ、私、せ、先生に教材を取りに……そ、それで」
沢田君はポケットから何かを取り出し、私に手渡す。
「掛けておいて!」
「サングラス?」
腰を抜かしている高山さんに沢田君は駆け寄り、同様のサングラスを自身も掛ける。
「あ、あの……」
沢田君はさらにペンを取り出し、先端の赤いボタンを押した。すると
発光――
「君は大きなゴキブリを見て驚いた、いいね?」
虚ろ気な目の高山さん
「はい……」
「沢田君」
「僕の名前は沢田タケルじゃなく、S……MIBのエージェントだ」
ああ、それで私を見てたんだ。
彼が私を観察対象としてしか見ていないと分かり、ひどく落胆した。
「でもね……」
彼は私に駆け寄り、そして腹の口にキスをした。
「梔子さんの事、好きになってしまったんだ」
「えええええええええええ!」
腹から出した事のない声が出る。
「ここにいるとまずい、逃げよう!」
彼は困惑する私の手を引き、教室から連れ出す。
しばらく彼の顔を見て話せそうにない。
最初のコメントを投稿しよう!