第二章 好き

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第二章 好き

 そんな私のストレス解消法は、誰もいない視聴覚室で思いっきり叫ぶことだ。  この部屋は、なぜか鍵がされていない。おまけに防音で滅多に人がこない事に気づいた私はここを日常からの避難所として利用するようになった。 ここで積もりに積もった思いをぶちまけるように叫ぶ。 「馬鹿野郎!私はお前らが思ってるよりも声、出るんだよ! 何しゃべればいいだ? 少なくともそこらの奴よりしゃべり上手い自信があるし、昼の一時間なんか余裕で場をもたせられるわ! そしてあの女子、嫉妬せずともあんたの男取らんわい!」 ひとしきり叫んだ後に私はぽつりと呟いた。 「でも……言えないんだよ……」 ガラッ!(扉が開く音) 思わず私が振り向くと、一人の男子がいた。 「あ、見つかっちゃった!」 彼には見覚えがあった。いや、いつも見ている。私の隣の席の沢田タケル君だ。 私は慌てて長い髪で顔を隠し、顔を伏せぼそぼそと彼に問う。 「ど、どうしたの?」 彼はぼそぼそとした私の声をちゃんと聞き取り 「いや、梔子さんがここに入るのを見たから何してんのかなって思って」 「き、聞いてたの?」 「うん、聞いてたし、見てた」 その一言に私の顔から血の気が引いていくのがわかった。この秘密をよりにもよって、沢田君に知られてしまうなんて……最悪だ。 なぜかって? そんなの決まってるじゃない! 私は沢田タケル君が好きなんだ。
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