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第三章 秘密
人前でうまく話せない私を嫌な顔せず励ましてくれた。
「梔子さん、気にすることないよ」
私の声をちゃんと聞いてくれた。
「梔子さん、大丈夫だって」
何よりイケメン!
そんな彼に私の秘密を知られてしまったんだから、
もう嫌われても仕方ない。
いや、もうこの学校にもいられないかもしれない。
それを想像しただけで私は恐怖し、体の震えが止まらなかった。
もう終わりだ――
目の間が真っ暗になっていく。
スッと何かが私の体を優しく包む。
「大丈夫、大丈夫だから」
一瞬、何が起きているのか分からなかった。
私があの沢田君に抱きしめられるなんて、恐怖のあまり気絶して夢を見ているんじゃないのか。
「本当はね……ずっと梔子さんの事見てたんだ。実は僕……」
「――」
耳元で囁いた彼の言葉に私は驚いた。
「だから安心して」
彼はそういうと腕を腰に回し、制服の上をめくり上げる。
「あっや!」
思考が追いついた時には、私は胸の下あたりまで、制服をまくりあげられていた。
そこには私の秘密。
大きなもうひとつの口が露わになっていた。
「み、見ないで!」
腹の口から声を発する私。
私は宇宙人と地球人のハーフ。ほとんど地球人と見た目は変わらないけど、一つだけ皆と違う所がある。 それは人より口数が多いのだ。
顔についている口は動くだけで、ほぼ飾り。食事や発声は全て腹の口から行っている。
だから喋る時は腹から声が出ている事がばれないように最小の発声で済ましている。
全ては正体がバレないようにするために。なのに――。
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