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第一章 嫌い
私は朝のHRの時間が嫌いだ。
「梔子さん!」
「はい……」
先生の点呼に可能な限りの声で応える私。
「梔子さん、梔子陽子さん!」
ぼそぼそとした私の声は教壇から離れた席からだと聞き取れるはずがない。
私は仕方なく手を上げ、先生と目を合わせ、「はい」と口元を動かす。
「梔子さん、もう少し声を張ってくれると先生助かるんだけど」
これが精いっぱいなんだよ、先生。
私は人前で歌うのが嫌いだ。
「梔子さん、お腹から声出して!」
出してるよ、えと……高…高尾さんだっけか?
選択授業では音楽ではなく美術を選択した私だが、毎年クラス対抗の合唱コンクールがあるのを失念していた。なぜクラスで、人は争わないといけないのかをよくわからない流行りの曲をBGMにしながら考えていた。
私は昼休みが嫌いだ。
チャイムと同時に席を立って教室から出ようとすると、
「あの……梔子さん、一緒にご飯食べない?」
クラスの男子からの食事の誘いに私が戸惑っていると、女子が割って入ってくる。
「ごめんね、梔子さん。こいつデリカシーなくて、ほら」
男子はその女子に連れられる形で私の元から去っていく。その時私に聞こえないように
(実際には聞こえている)女子がこう言った。
「クチナシと何しゃべればいいのよ……」
ああ、やっぱり……。
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