第1話 晴れ渡る空

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 言ってしまった後、急激に鼓動が早まった。  彼女にはこの言葉の意味が伝わるだろうか。  何を言っているの、と笑い飛ばすのならそれでいい。こちらも冗談だと笑って済ませることにする。そして、心のどこかではそれを願っている気もした。つい勢いで口にしてしまったけど、あまりにも直情的過ぎだし……。  だけど、鈴からはいまだ何の反応もない。ということは、きっとそのまま言葉の意味がわかってしまったのだ。これはその上での沈黙だ。なんだかいたたまれなくなってきた。  きっと戸惑わせている。――いや、思いっきり引かれているんじゃないのか?  小さく後悔の息をついて、あえて冗談めかして言った。 「あー、ごめんごめん、鈴ちゃん。変なこと言った。忘れて」  それでもまだ、向こうからの反応はない。  ……まずい。これは本気で失敗したかも。  つい頭を抱えたオレの耳に、小さな声が届いた。 『――いいよ』
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