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大雨が降った日。
鈴が最後に家に来た日――彼女を傷つけてしまった日のことだ。
思わずその場に座り込んで、頭を抱えてしまった。
あの日、愛が鈴を車で送ってくれていたということ、今初めて知った。
普通ではない帰り方だったし、オレと鈴の間に何かがあった、ということぐらいは感付かれているだろうなとは、薄々思っていた。
でも、愛は一言もオレにそのことを問い詰めてこなかった。全く知らんぷりされていた。
そういえば、と思う。「彼女は、鈴ちゃんは……」とからかわれたことも、その日以降はないような気がした。その前まではしつこいくらいだったのに。
あの日から、愛なりに、気を遣ってくれていたんだ。
「景品でくまもらった後、愛、すぐに『これは透の彼女にあげよう』って言ってた。ホント、素直じゃないよねぇ、愛も」
美雪ちゃんはクスリと笑いを零した。
「透ちゃんのこと、本気で心配してるんだよ、愛。いいお姉さんだよね」
頭上からの声に、オレは顔を上げないまま、小さく「うん」と頷いた。
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