第4話 流れる雲

25/28

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
 大雨が降った日。  鈴が最後に家に来た日――彼女を傷つけてしまった日のことだ。  思わずその場に座り込んで、頭を抱えてしまった。  あの日、愛が鈴を車で送ってくれていたということ、今初めて知った。    普通ではない帰り方だったし、オレと鈴の間に何かがあった、ということぐらいは感付かれているだろうなとは、薄々思っていた。  でも、愛は一言もオレにそのことを問い詰めてこなかった。全く知らんぷりされていた。    そういえば、と思う。「彼女は、鈴ちゃんは……」とからかわれたことも、その日以降はないような気がした。その前まではしつこいくらいだったのに。  あの日から、愛なりに、気を遣ってくれていたんだ。 「景品でくまもらった後、愛、すぐに『これは透の彼女にあげよう』って言ってた。ホント、素直じゃないよねぇ、愛も」  美雪ちゃんはクスリと笑いを零した。 「透ちゃんのこと、本気で心配してるんだよ、愛。いいお姉さんだよね」  頭上からの声に、オレは顔を上げないまま、小さく「うん」と頷いた。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加