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オレはポンさんの丸い背中を見つめた。
何も言わずとも、オレが落ち込んでいたことに気付いていた姉。
……きっと、そういうことなのだ、と思う。
見る人が見れば、どんなに上手く繕っているつもりでも、本当のところは見えてしまうのだ。
オレが笑顔の裏に隠した痛みや辛さや悔しさ……そういうものも全部わかってしまうのだろう。
『……もっと強くなるから。透が甘えられるくらい――』
そう言って自分を抱きしめてくれた鈴の温もりを思い出す。
あの言葉の、あの行動の本当の意味が、今やっとわかった気がした。
鈴のために、という勝手な言い分の上で、自分の弱さを隠すことばかり考えて、鈴の本当の気持ちを考えていなかった自分の愚かさが痛い。
鈴は最初から、オレを全身で受け止めようとしてくれていたのに、オレは「大丈夫」という言葉と笑顔でそれを拒んできた。
酷い拒絶だ。
鈴を遠ざけたのは、誰でもなくオレ自身だ。
「馬鹿だ、オレ」
ジクジクと胸が痛い。
枕を引き寄せて、それをギュッと顔に押し当てた。
痛くて泣きたくなったのは、もう随分久し振りのことだった。
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