29人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
公園脇に到着すると、コートの中にいた涼介さんがそれに気付き、ボールを脇に抱えて近付いてきた。
涼介さんはオレが乗ってきた自転車に不思議そうに手をかける。そして、オレの足を見やり、少し首を傾げて口を開いた。
「へいき?」
「自転車? あー、平気平気! リハビリにもなるし」
数日前から自転車に乗り始めた。
最初は怖々だったけど、それもすぐに慣れた。
怪我の回復は順調で、装具もじきに外れる。リハビリはまだまだ続くけど、確実に治癒していく実感に、心も軽くなっていた。
オレはいつものように脇のフェンスに寄りかかって座る。
「やってていいよ」というオレの言葉に涼介さんは首を振り、ペットボトルを仰いで喉の渇きを潤すと、ホワイトボードをとった。
『ずいぶんひさしぶり。どうしてた?』
「ごめん。なんかいろいろバタバタしてて。来る時間なかった」
実は、オレが最後に来た日から、もう2週間近くが経っていた。涼介さんは苦笑した。
『べつにあやまることじゃない』
「ハハッ! まあ、そうだよね。涼介さんは毎日来てた?」
『まいにちじゃないけど、ほとんどはね』
「そっかぁ」
涼介さんがなぜいつもこここで練習をしているのか、一度聞いたことがある。
その時、涼介さんはただ『好きだから』と答えた。細かいことは話してくれなかったけど、オレには納得の答だった。
好きだから練習をする――何を言われるより理解できたかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!