第5話 月あかり

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 公園脇に到着すると、コートの中にいた涼介さんがそれに気付き、ボールを脇に抱えて近付いてきた。  涼介さんはオレが乗ってきた自転車に不思議そうに手をかける。そして、オレの足を見やり、少し首を傾げて口を開いた。 「へいき?」 「自転車? あー、平気平気! リハビリにもなるし」  数日前から自転車に乗り始めた。  最初は怖々だったけど、それもすぐに慣れた。  怪我の回復は順調で、装具もじきに外れる。リハビリはまだまだ続くけど、確実に治癒していく実感に、心も軽くなっていた。  オレはいつものように脇のフェンスに寄りかかって座る。 「やってていいよ」というオレの言葉に涼介さんは首を振り、ペットボトルを仰いで喉の渇きを潤すと、ホワイトボードをとった。 『ずいぶんひさしぶり。どうしてた?』 「ごめん。なんかいろいろバタバタしてて。来る時間なかった」  実は、オレが最後に来た日から、もう2週間近くが経っていた。涼介さんは苦笑した。 『べつにあやまることじゃない』 「ハハッ! まあ、そうだよね。涼介さんは毎日来てた?」 『まいにちじゃないけど、ほとんどはね』 「そっかぁ」  涼介さんがなぜいつもこここで練習をしているのか、一度聞いたことがある。  その時、涼介さんはただ『好きだから』と答えた。細かいことは話してくれなかったけど、オレには納得の答だった。  好きだから練習をする――何を言われるより理解できたかもしれない。
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