第1話 晴れ渡る空

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「……え」  すぐには意味が掴めず、目をパチくりとさせた。  いいって、何が? 忘れるのが?  こちらの沈黙に、鈴が小さな声を被せた。 『お祝い……いいよ。あげる』 「――鈴?」  一瞬戸惑って、ついそう窺ってしまう。今、鈴は何て……? 『そ、それとも、冗談、だった――かな』  鈴の消え入りそうな声に、少しずつ頭が働き出した。心臓の拍動がうるさいぐらいに早くなる。 「じょ、冗談じゃないよ! けど――ま、マジで?」  怖いような気がして、恐る恐る確認してみた。鈴が小さく笑いを零した。 『……うん』  そして、今にも消え入りそうな肯定。  思わず身を起こして、両手でギュッと携帯電話を握りしめた。 「し、信じらんね……」 『し、信じ、られないなら、それでも、いいけど……』  鈴のとぎれとぎれの言葉から、彼女の緊張が伝わってきた。そこから、彼女がこの場の勢いからだけじゃなく、ちゃんと考えて応えてくれたのだとわかった。  胸に熱いものがじわじわと込み上げてくる。 「――ありがとう、鈴ちゃん」  思いを込めて言うと、鈴から慌てたような声が上がった。 『でっでも、優勝したら、だよ』 「それはもちろん!」  勢い込んで答えた。 「オレ、絶対優勝するから。今なら地区優勝どころか、世界記録も更新出来そうな気分だ」 『そんな大袈裟な』  ようやく少し落ち着いたような鈴の笑い声が聞こえた。 『頑張ってね』 「うん」  鈴の優しい声に、目を閉じて深く頷いた。  ――君が好きだよ。  簡単に言えそうで言えないその言葉を、何度も心の中で繰り返しながら。
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