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「――会いたい」
ふと、そんな言葉が口をついて出た。言ってしまえばそれが一番伝えたかったことのような気がした。
「オレ、鈴に会いたい。ずっと、会いたいって思ってた」
すぐに反応はなかった。それでも構わないと思う。例えしつこいと思われてもいい。オレはただ思うままに言葉を紡いだ。
「鈴と会って顔を見て話をして……一緒に歩いたり、笑ったりしたい。今は……それだけでいい。それだけが、欲しい」
以前から鈴といる時間は好きだった。
楽しかったし幸せだと思っていた。
でも、それ以上に、こんなにも愛しく大切なものだと気付いたのは、その時間を失ってからだ。
鈴に言わなければいけないことはたくさんある。それでも、今鈴に伝えたいのはその言葉だけだった。
「会いたい」
その短い一言に全ての想いを込めた。
後は静けさが耳を打つ。
『……わたしも』
やがて、小さな声が応えてくれた。
『わたしも透に会いたいと思ってた』
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