第5話 月あかり

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     *     *     * 『TELしてどうした?』  涼介さんの問いに、笑って答えた。 「今度会うことになった」  涼介さんが意外そうに目を丸くした。 『こんど? まだ会ってない?』  涼介が意外に思ったのも無理はない。鈴に電話をしたのは、もう何日も前の話だから。オレは小さく肩をすくめてみせた。 「鈴ちゃん――彼女、今親戚の家にいるんだって」  事情を説明しようとして、言うよりも書いた方が早いと気付き、涼介さんからボードを借りた。  鈴が今親戚のいる北海道にいること、それが避暑も兼ねて毎年のことらしいということ、こちらに戻ってくるのは明後日だということ。  オレが書いた文字を読みながら、涼介さんが表情を微かに曇らせた。 『とーる、そんなこともしらなかった?』 「うん、知らなかった。そんな話をする機会もなかったから」  夏休み前はまともに話もできなかったのだ。  鈴が避暑で北海道に行くとか、何も聞いていなかった。  だけど、それを今さらグダグダ言っても仕方がない。オレは気を取り直し、自分に言い聞かせるように言った 「――今度、会ったらいろいろちゃんとしようと思う。これまでのことも、これからどうしたいかも、ちゃんと彼女に話す。ハイジャンのことも、進路のことも……やっとはっきりとした答が見えたから」  それだけのことを考える時間はたっぷりあった。それがここにしばらくの間来ることができなかった理由だ。  オレは逃げるのをやめて、いろんなことをじっくり考えてみたんだ。    前を向いて独り言のように話したオレの言葉が、どれぐらい涼介さんに伝わったのかはわからない。だけど、涼介さんは穏やかな微笑みを浮かべて頷いてくれた。  いまさらながら、自分が涼介さんのいるこの場所を逃げ場所に選んだのか、わかったような気がした。
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