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「あ、そういえば、言ったことあったっけ。涼介さん、オレの姉貴と同じ年」
涼介さんが驚いたように目を丸くした。
『おねーさん? いるの?』
「うん。口うるさいのが一人」
涼介さんが、何かいいことを思いついたと言わんばかりの笑顔で文字を書き連ねていく。
そして見せられたボードの言葉に、唖然としてしまった。
『オレにしょーかいして!』
「……は?」
あまりに予想外。
我に返って、慌てて首を振った。
「や! いやいや! まさか、本気じゃないでしょ?」
「ホンキ」
ゆっくりと声に出してニッコリと笑う涼介さん。そして続きを書いて見せた。
『とーるのおねーさんなら美人だろ』
その言葉にまた面喰ってしまった。愛が美人かどうかは置いておいて、そういうことに涼介さんが興味を示すとは思ってもみなかった。
「意外だ……って、いや、それも失礼なんだろうけど」
咳払いをするふりをして口許を隠しながら、気を取り直して笑顔の涼介さんに向き直った。
「あ、あのさ。涼介さん彼女いないの?」
涼介さんは肩をすくめてスラスラと書く。
『半年まえくらいにフラれた。いろいろムズカシイんだよ』
オレはうっと言葉に詰まった。
涼介さんは軽く書いたけど、受け取りようによってはとてつもなく重い言葉に思える。オレはもう慣れてしまってあまり意識しないようになったけど、涼介さんはハンデを抱えていて、恋人として交際するとなると、いろいろ問題も出てくるのかも……。
……と深刻になりかけた思考を、慌てて切り替えた。
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