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「――と、とにかく、涼介さん。うちの姉貴はやめたほうがいいよ。あのヒトは姉というよりは兄に近いから――」
と、その時。
「透ー?」
聞き慣れた声が聞こえて、オレはギクリと身を強張らせた。そんなオレの変化に、涼介が怪訝そうな顔をする。
オレはギクシャクと、声のした方を振り返った。少し遅れて、涼介さんがその視線を辿る。
「……げ」
つい呻き声が漏れた。
さすがに涼介さんには聞こえなかったようで、オレの視線の先にいる、フェンスの向こうで自転車に跨ったままこちらを向いている女性を、ただ不思議そうに見つめている。
「やっぱり透じゃん!」
女性が大きく手を振ってきた。涼介さんがオレを振り返る。
「だれ?」
オレは観念して息を吐いた。
「……オレの姉貴。噂をすればってやつだね……」
涼介さんは驚いたように目を丸くして、もう一度フェンスの向こうに目を向けた。
愛はまさに今自転車を停め、颯爽とオレと涼介さん目指して歩いて来るところだった。
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