第1話 晴れ渡る空

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「透!」  木陰でタオルを顔にかけて横になっていると、突然無遠慮にそのタオルがはがされた。 「……慎吾」  顔を顰めつつ目を開けて、自分を覗きこんでいる顔を確認する。  川島慎吾。同じ陸上部の長距離の選手だ。中学時代からの親友でもある。 「絶好調だな、透」 「おー」  気のない返事をして、体を起こした。木に寄りかかって座ると、慎吾もその隣に並んだ。  慎吾とは三年になってクラスが別れた。部活は同じでも、練習メニューが違うため、最近はゆっくり話をしていない。 「透、昨日自己ベスト更新したんだって? おまえ、今度は良いとこいけるんじゃね?」  そう言われて、フッと唇を歪ませた。 「当然。オレ、優勝狙ってるし」  慎吾が意外そうな顔をする。 「へえ? 透がそんな野心剥き出しにするなんて珍しい。何か心境の変化でもあった?」 「鈴ちゃんと約束したんだよ」  間髪を入れずに答えると、慎吾は一瞬目を丸くし、呆れたように笑った。 「おまえって、本当に鈴ちゃん好きだよなぁ」 「うん。好きだよ」  素直に頷く。訊かれたのが例え慎吾じゃなく他の誰だったとしても、同じように答えたと思う。想いを誰に隠すつもりもなかった。慎吾はそんなオレをよく知っているが、さすがに苦笑いを返されてしまった。
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