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これまでになく長く感じられた夏休みも、残すところあと一日となったこの日、オレは鈴を家に招いた。
「どうぞ、入って」
部屋のドアを開け鈴を中に促すと、鈴は一瞬ためらったように足を止めた。
その様子にハッとした。部屋に誘ったのは少し軽率だったかもしれない。
以前、鈴をこの部屋に入れた時に自分がとった行動を思えば、鈴が警戒するのも当然なのだ。
「あー、やっぱり下にしようか」
「えっ、あ――ううん!」
鈴は慌てたように首を振った。オレが何に気を使ったのか思い当たったようだった。
「そういうんじゃないの。ごめん、ちょっとびっくりしただけだから。――あれ」
鈴が部屋の中を指差した。その先にはベッドの上に、こちら側を向いて鎮座している巨大なくまのぬいぐるみ。鈴が苦笑する。
「思ってたよりおっきいから」
鈴は今度は躊躇わずに部屋の中に入り、くまのポンさんを手で撫でて振り返った。
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