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「これ、もらってもいいの?」
「うん。でも本当に迷惑じゃない?」
鈴を家に呼んだ理由の一つは、これだった。以前愛にもらった――というより押し付けられたくまのポンさんぬいぐるみ、結局、鈴がもらってくれることになったのだ。
「癒されるかもー」
笑いながら鈴はぬいぐるみをキュッと抱きしめ、その隣に腰掛ける。
あ……やばい。
オレのベッドに、鈴が座る、とか。
勝手にドキドキしながら、ドアに手を掛けた。
「エ、エアコン付けるからここ閉めるけど――いいかな」
思わず声に緊張が滲んだ。
鈴は「うん」と不思議そうに頷き、その次の瞬間、ハッとしたように立ち上がった。
「ご、ごめん!」
慌てて床に座りこむ鈴に、今度はオレの方が慌てた。
「い、いや! こちらこそ、変な意味で言ったんじゃないから! け、決して、そんなつもりはないし!」
「そ、そんなつもりって」
「あ、その、だから……」
お互いに顔を赤くし、言葉を失くして黙りこむ。部屋の温度が一気に2、3度上がったかのようだ。
ハタハタと手で顔を扇ぐ。ふと見ると、鈴も同じようにしていた。そのことに鈴も気付いたのか、二人で顔を見合わせて、ほぼ同時に吹き出した。
「やだな、もう……おかしいね」
「全く――あ、楽にしていいよ」
膝を固く閉じて正座している鈴に言って、持ってきた麦茶とコップを折りたたみテーブルの上に並べた。そうしているうちに、お互いの妙な緊張もほぐれたようだった。
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