29人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
寂しい、と思ってはいけないのかもしれない。
道が違うのは当たり前のことで、それを認め合って励まし合ってこそ良い関係でいられるんだと、頭では理解している。
それでも、思わずにはいられない。
「……ずっと一緒の道を行けたらいいのにな」
鈴が顔を上げた。驚いた様子も見せず、ただ真っ直ぐにオレを見つめ返している。その視線を受け止めながら、オレは微笑った。
「――なんて、さ。こんなこと、言ってもしょうがないことだしね。さ、勉強勉強!」
感傷を振り払うようにノートに向う。
一緒の道を行きたい――それはただの我儘だ。鈴にそれを押しつけているわけではないけれど。
口に出したのは、そんな自分の気持ちを少しでも鈴に伝えたかったから。
ただそれだけだった。
「……透」
ポツリと名を呼ばれ、オレはノートから目を上げた。
「ん?」
「わたしも、透と一緒の道を行きたいって思ったよ。だから――聞いて、透」
鈴はオレの目を見つめたまま、真剣な顔で重ねて言った。
「わたし、透と一緒の大学受けるから」
「――え」
最初のコメントを投稿しよう!