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鈴は睨みつけるようにオレを見つめていたけれど、ふとその表情を緩めて微笑んだ。
「透。そんな困った顔しないで。わたし、後悔はしないよ。今の感情だけの勢いで言ってるわけじゃないからね」
「え?」
目を丸くするオレに、鈴はさらに笑みを深めた。
「この前、透に進路を決めたって話聞いて、わたしも改めて考えたんだ。透が目指すものを見つけられて、本当に良かったって思った。同時に、考えさせられた。わたしは今まで、自分の将来に強いこだわりを持ったことない。どうしてもここに行きたいとか、これがやりたいとか、そんな強い目標も望みもなかった。ただ漠然と、受かったらいいなって思うぐらいで……。透と比べて、そんなフワフワしてた自分が情けなくなった」
鈴は麦茶を一口飲んで、続けた。
「情けないままではいたくなかった。だから、わたしは本当に自分がしたいこと、何を望んでいるのか考えて……でもね、一番に思ってしまうのはどうしても透のことだった。わたしは透と一緒がいい。そうじゃないなら、どこに行っても同じなの」
直球すぎる鈴の言葉に面喰ってしまう。
嬉しいと思うよりも、まだ戸惑いの方が大きかった。
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