29人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
「まったく、毎度ごちそうさん」
「なんだよ、慎吾だって、果歩ちゃん好きだろ?」
果歩ちゃんは慎吾の彼女だ。彼らの交際は高校入学直後からだから、オレたちよりも長く付き合っていることになる。ついでに言うなら、果歩ちゃんは鈴の親友でもある。
「まあ……す、好き、だけどさ」
慎吾はごもごもと答える。その顔が仄かに赤いのは照れているからで、こっちの方が一般的な男子の反応なのかもしれない。照れないオレの方が珍しいのかも。
「でもさ、俺は透ほどそうあけっぴらには言えないな」
「なんで?」
「だって、恥ずかしいじゃんよ。――って、おまえにはわかんねーかなぁ」
ため息を落とした慎吾に、ただ笑った。
好きだということを表現することは恥ずかしい……もちろん、わからなくはない。
「前から聞きたかったんだけどさ、どうして透はそんなに鈴ちゃんが好きなわけ?」
「……なんかさぁ、それって鈴ちゃんに失礼じゃないか?」
「あー、違う違う! そういう意味じゃなくて。なんちゅうかさ……そこまで相手を一途に想えるってのも、すげえなぁって」
頭を掻く慎吾を見やって、オレは小さく首を傾げた。自分が「すげえ」と思われるほど一途だとか考えたこともなかったけど、長く想い続けることを一途というのなら、確かにオレはそうなのかも。
ちょうどその時、目の前を白い蝶々がひらひらと横切って行く。それをなんとなく目で追いながら、自分の「一途さ」について思いを巡らせた。
最初のコメントを投稿しよう!