第6話 虹

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『でも、よかったな、とーる。  一時期は毎日お通夜みたいなカオしてたのに』 「お通夜って……」  ポリポリと鼻の頭を掻いた。涼介さんの表現は大袈裟だけど、否定もできない。    涼介さんはボードの文字を消し、また新たにサラサラとペンを走らせて、今度は鈴に向ってボードを見せた。   「?……――え、あ……そう、なんだ……?」  返答に困ったような顔で首を傾げる鈴に、オレはボードに何が書いてあるのか覗いてみた。   『とーる、スズちゃんと会えないって、えらい落ち込んじゃってたんだよ。  もう、この世のおわりかーってくらい。  スズちゃんがいないと生きていけません、ってカオしてた。  そりゃもう、なさけなかったー』 「――うっ! りょ、涼介さん!」  慌ててボードを奪い取り、涼介に向って食いかかる。引いていた汗がまたどっと噴き出してしまった。事実だけど、そういうことを鈴本人に知られるのはたまらなく恥ずかしい。  涼介さんは涼しい顔をしてオレからボードを取り戻すと、ニッコリと笑顔を向けた。 『あてられたお返し』 「うわ……実は涼介さんって根に持つタイプだった?」  こくりと頷く涼介さんの笑顔は、文句のつけようがないくらい爽やかだ。   「なんか、仲良しの兄弟みたい」    鈴がそう言ってクスクスと笑う。   「えー……そう?」  そう言われると、なんだかくすぐったいような気がする。
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