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『でも、よかったな、とーる。
一時期は毎日お通夜みたいなカオしてたのに』
「お通夜って……」
ポリポリと鼻の頭を掻いた。涼介さんの表現は大袈裟だけど、否定もできない。
涼介さんはボードの文字を消し、また新たにサラサラとペンを走らせて、今度は鈴に向ってボードを見せた。
「?……――え、あ……そう、なんだ……?」
返答に困ったような顔で首を傾げる鈴に、オレはボードに何が書いてあるのか覗いてみた。
『とーる、スズちゃんと会えないって、えらい落ち込んじゃってたんだよ。
もう、この世のおわりかーってくらい。
スズちゃんがいないと生きていけません、ってカオしてた。
そりゃもう、なさけなかったー』
「――うっ! りょ、涼介さん!」
慌ててボードを奪い取り、涼介に向って食いかかる。引いていた汗がまたどっと噴き出してしまった。事実だけど、そういうことを鈴本人に知られるのはたまらなく恥ずかしい。
涼介さんは涼しい顔をしてオレからボードを取り戻すと、ニッコリと笑顔を向けた。
『あてられたお返し』
「うわ……実は涼介さんって根に持つタイプだった?」
こくりと頷く涼介さんの笑顔は、文句のつけようがないくらい爽やかだ。
「なんか、仲良しの兄弟みたい」
鈴がそう言ってクスクスと笑う。
「えー……そう?」
そう言われると、なんだかくすぐったいような気がする。
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