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「――ねえ、透」
鈴の楽しげだった笑みが、少しだけ寂しげに変わった。
「涼介さんって、似てる、かも」
「似てる?」
誰に、と首を傾げたオレに、鈴は一度唇を引き結び、言った。
「雰囲気が、ね……高城に似てる」
「え……」
一瞬、言葉を返すことができなかった。涼介さんを振り返ると、きょとんと一人首を傾げている。
涼介さんが浩太に似ているなどと、考えてみたこともなかった。
だけど、言われてみれば、すんなりとそれを受け入れることができることに気付く。
涼介さんは、高城浩太に似ている――。
当然ながら、外見は全く違う。細かい性格だって全然違う。だけど、柔らかな笑顔と、周囲にいる者を和ませてしまうような温かな雰囲気が、なるほど、浩太を思い起こさせる。
ああ、そうか。
オレが涼介さんに惹かれたのは、それも大きな理由の一つだったのかもしれない、気付かないうちに、オレは涼介さんの中に、もう二度と会えない従兄の影を見ていたのかもしれない。
『オレがどうかした?』
涼介さんが不思議そうな顔をして訊いて来た。オレは鈴と顔を見合わせる。死んだ人と似ている、などと言われても、あまりいい気分はしないものかもしれない、けど。
「オレたちの大事な友達に雰囲気が似てるって。ね、鈴ちゃん?」
「――うん」
いつかちゃんと、涼介さんにも浩太のことを話そう――そう決めて鈴を見やると、その考えがわかったかのように、鈴は小さく頷いた。
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