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「おーい!」
突然、その場に陽気な声が跳び込んできた。
オレと鈴は反射的に振り返る。それにつられるように視線を動かした涼介さんの顔が、パッと明るくなった。
「あれ? 透のお姉さん?」
確かに、自転車から降りて公園に入ってきたのは愛だった。
「うわあ。なんで来るんだよ……」
つい苦虫を噛みつぶしたような顔になるオレの前に、涼介さんのボードが差し出された。
『アイ、のみもの買いに行ってくれてただけ。先にココに来てたのはアイ』
「えっ、まじで……?」
愛がいるとわかっていたら、鈴を連れてくるのはまた今度にしたのに、と後悔してももう遅い。愛はニコニコと満面の笑みを浮かべながら近付いて来た。
「なんだー、透たちも来てたの? 差し入れもっと買ってくれば良かったね。――あ、こんにちは、鈴ちゃん!」
「こ、こんにちは?」
何故ここに愛がいるのかをまったく把握できないのであろう鈴は、どこか戸惑った顔でお辞儀を返した。
「透は何変な顔してんの。あ。あのくま、鈴ちゃん貰ってくれるの?」
「あ、はい」
「ごめんね、無駄にでっかくて。でも、透の殺風景な部屋にいるよりは鈴ちゃんとこに貰われた方がポンさんも喜ぶと思うから」
愛はビニール袋からペットボトルを取り出し、「ハイ」と涼介さんに手渡した。涼介さんが『ありがとう』と手話で答える。
そんな二人の様子を見ながら、オレはまた複雑な気持ちになってしまった。
オレの知らない間に、いつの間にやら二人は随分と親密さを増しているようだ。
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