第6話 虹

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「ね、ね、透。お姉さんたち、付き合ってるの?」  オレのシャツを引っ張り、鈴がこっそりと訊いてくる。うーんと眉を寄せた。  愛の気持ちはどうやら確かみたいだけど、涼介さんの方は知らない。 「愛の片想い止まりじゃないかな――」 「こら、そこっ!」  愛の鋭い声が飛んで来る。ついビクリと肩をすくませた。 「聞こえてるよ。勝手な憶測するなー」  愛が口を尖らせながらツカツカと歩み寄って来て、オレの頭を容赦なく叩いた。  そんな愛の背後では、水分補給を済ませた涼介さんが、ボールを手にしてコートの中に向かっている。  バンバン、と小気味良いバウンド音が響き出す。 「あのね、片想いだろうがなんだろうが関係ないの。今は傍にいられるだけでいいんだから」  鼻先にビシッと人差し指を突き付けながら、愛がオレを睨みつける。その迫力に思わず身を引いてしまった。 「や……愛の口からそんな殊勝な言葉が出てくるとは思わなかった。もっと強引に迫りまくってるのかと……」 「なにィ?」 「――でも、その気持ちよくわかります」  一発触発になりかけた姉弟(オレたち)の間に、静かな声が割り込んできた。 「傍にいられるだけでいいって気持ち、よくわかります」
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