第6話 虹

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 もう一度そう繰り返す鈴を、愛は目を瞠って見返した。やがて、大きく息をつき、力の抜けた笑みを浮かべる。 「ホント、いいコね……透」  ポン、と肩を叩かれ、オレは思わず姿勢を正した。 「鈴ちゃんのこと大事にしなさいね。泣かせたらねーちゃんが許さないから」  愛はオレの背中を叩くと、涼介さんのいるコートの中へと駆け出して行った。そしてそのまま涼介さんからパスを貰い、シュートを放ちにゴールへ向かう。素人ながら、持ち前の運動神経のおかげか、けっこう様になっているではないか。  その姿をなんとなく見やりつつ、オレは小さくため息をついた。 「怖ぇ姉貴」 「でも、いいお姉さんだよね」  クスクスと笑っている鈴を見下ろし、決意を固めるように、オレは体の横に下ろした手をギュッと握りしめた。 「……もう泣かせたりしないから」 「え?」  聞こえなかったのか、鈴がきょとんとした顔で見上げてくる。  オレは小さく首を振った。 「何でもないよ。――ほら、オレたちも入ろ?」  鈴の手をとり、コートの中へ行こうとすると、鈴が驚いたように身を引いた。 「え! でも透、足――」 「大丈夫! 絶対無理はしないから」  ぐいぐいと引っ張っていくと、鈴も苦笑しながら、諦めたようにオレの手を固く握り返してついて来る。  コートの中では、涼介さんと愛が、満面の笑顔でオレたちを待っていた。
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