最終話 明日へのジャンプ

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「あれ。手振らないの?」    慎吾が意外そうに言う。  以前なら、鈴を見付ければ周囲構わず、ブンブンと手を振ってアピールしていたオレだ。確かに、ここで手を振らないのは、慎吾にとっては意外なことかもしれない。  ――けど。 「いいんだよ。ちゃんと見てくれてるの、わかってるから」  オレは、鈴に軽く敬礼のように手を上げて見せただけで、すぐに準備運動に戻った。そんなオレを、慎吾がしみじみと見つめる。 「なんか、すっかり落ち着いちゃったよなぁ、おまえ」 「そう?」 「うん。夏過ぎ辺りからかな、変わったなぁって感じる」  オレは小さく笑いながら足を前後に広げ、アキレス腱を伸ばし始めた。最初は怖々だったこの動きも、今では何の抵抗もなく行える。 「まぁ、いろいろあったからさ。変わったと言われれば、そうかもしれないなぁ」 「ふうん? いろいろ、ねぇ……」
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