最終話 明日へのジャンプ

8/8

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
 ふと観客席を見やる。  そこには真っ直ぐに自分を見つめてくれている鈴の姿がある。今日この瞬間を見に来て欲しいと言ったのはオレだ。  再度バーを見据えた。  ――跳ぶ。  鈴の気持ちを一緒に、あのバーの向こうへ連れて行く。  トントンと軽いリズムをとるように助走を始めた。少しずつその歩幅を縮めていく。 「透ーっ!」  微かに聞こえて来たのは、間違いなく彼女の声だ。それが力となる。  思い切って踏み切る。体が宙に浮いた。  肩越しにバーを見やる。余裕のある位置に見えるそれ。  ――越えた!  確かに掴んだ確信と共に、オレの目に空が映った。  どこまでも透き通った、深く青い空が映った。    <完>
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加