第1話 晴れ渡る空

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 あ、飛行機雲、二つ――。  視界一杯に空が広がる。  それは永遠とも思える刹那の浮遊感――。  瞬きする間もなく、体が背中から深くマットに沈んだ。反動で一回転した体をそのまま横たえ、遥か高い空を見ていた。  青い空に並行して走る二筋の飛行機雲。線路みたいだな……などとやけに子供じみたことを思う。 「――(とおる)さん、大丈夫ですか?」  その声にようやく体を起こした。計測していた後輩部員が駆け寄ってきている。いつもならすぐ体制を立て直すオレが、いつまでも起き上がらないことが心配になったのだろう。 「ごめん、へーき」  軽く笑ってマットを降りた。そこで改めて自分が跳び越えたバーを確認する。  バーは少しもぶれていない。 「軽くクリアですね、透さん」 「おう、楽勝!」  冗談めかしてガッツポーズを作って見せた。後輩は笑いながら元の場所に戻って行く。  オレはもう一度飛び超えたバーを見やった。今超えた高さは言うほど余裕の持てる高さじゃない。でも、何の問題もなく跳ぶことができた。  ――うん、どうやら絶好調だ。  再び空を見上げる。  二本の飛行機雲はまだ鮮やかだった。
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