第2話 涙雨

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 あの瞬間。  アキレス腱が切れたあの瞬間、痛みではなく、ただ何かにぶつかったかのような衝撃を感じただけだった。本当に、何が起こったのかわからなかった。  時間差でじくじくと訴え出した痛みも、耐えられないというほどのものでもなく、すぐにでも立って歩けそうな気がした。だけど、意に反して、足は自由にならなかった。  その時になって、ようやく事態の深刻さに気付いた。    痛みに気を向けるより先に、まず明後日に控えた競技大会のことを考えた。  出場できない。  ――跳べない。  コーチや部員たちが自分の周りで騒然とする中、ただ空を仰いだ。  いつも近くに感じていた空が、ひどく遠かった。
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