第2話 涙雨

7/24

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
 なんとなく付けたテレビは、どのチャンネルに合わせても娯楽情報番組だった。前日浮気が発覚した俳優のことが話題になっている。  しばらくぼんやりとそれを眺めていたけれど、ちっとも面白味を感じない。浮気するもされるも、本人たちだけの問題だろ? そんなに大騒ぎするほどのことかって。  そう考えながら、ボーっと画面を見つめる。浮気したとされる俳優がたくさんのマイクを向けられて、フラッシュを浴びながら必死に弁明している様は、ちょっと異様だ。 「バッカみてぇ」 「じゃあ、消せば?」  冷めた声に顔を動かすと、愛が寝起きでリビングに入ってきたところだった。 「……おはよ」 「はよー。あんたねぇ、そんな奥様方の娯楽テレビ見てぼやいてんじゃないよ。ピッチピチのコーコーセーが」  あくび交じりに言いながら、のそのそと台所へ向かう。  およそ年頃の女性らしくないだらしなさだ。そんな姉の姿はとうに見慣れていて、特に呆れもしないけど。ただ、外に出る時の完璧に化けた姿を見た時、そのオンとオフの差に呆気にとられる時はある。 「他に面白いのやってねーもん」 「だから消せばって。――あれ、あんたご飯食べてないじゃん。食べないの?」 「あー。なんかそっち行くのめんどい。腹減ってないしいいや」  別に、この後運動するわけでもないし、と心の中で付け足す。愛は「あっそ」と軽く返事をくれただけだった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加