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なんとなく付けたテレビは、どのチャンネルに合わせても娯楽情報番組だった。前日浮気が発覚した俳優のことが話題になっている。
しばらくぼんやりとそれを眺めていたけれど、ちっとも面白味を感じない。浮気するもされるも、本人たちだけの問題だろ? そんなに大騒ぎするほどのことかって。
そう考えながら、ボーっと画面を見つめる。浮気したとされる俳優がたくさんのマイクを向けられて、フラッシュを浴びながら必死に弁明している様は、ちょっと異様だ。
「バッカみてぇ」
「じゃあ、消せば?」
冷めた声に顔を動かすと、愛が寝起きでリビングに入ってきたところだった。
「……おはよ」
「はよー。あんたねぇ、そんな奥様方の娯楽テレビ見てぼやいてんじゃないよ。ピッチピチのコーコーセーが」
あくび交じりに言いながら、のそのそと台所へ向かう。
およそ年頃の女性らしくないだらしなさだ。そんな姉の姿はとうに見慣れていて、特に呆れもしないけど。ただ、外に出る時の完璧に化けた姿を見た時、そのオンとオフの差に呆気にとられる時はある。
「他に面白いのやってねーもん」
「だから消せばって。――あれ、あんたご飯食べてないじゃん。食べないの?」
「あー。なんかそっち行くのめんどい。腹減ってないしいいや」
別に、この後運動するわけでもないし、と心の中で付け足す。愛は「あっそ」と軽く返事をくれただけだった。
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