第2話 涙雨

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「ほい、コーヒー。うわあ、なんて優しいお姉ちゃんでしょうか」 「自分で言うなよ」 「あんたが言わないからでしょ。あ、そうだ。私も予定より早めに目が覚めたし、準備ができたらもう行こうか?」  愛に言われ、壁の時計を見やった。九時を回ったところだ。 「どっちでもいいよ」  連れて行ってもらう立場だ。時間の選択権は愛に任せることにした。 「おっけー。じゃあ、準備する。あんたも支度しなさいよ」 「おー」と返事を返すと同時に、インターホンが鳴った。 「お、誰か来た。あんた出てよ――って無理か」  愛は慌てて髪を手櫛で梳きつつ、衣服を整える。素早く身だしなみを整えるその技には感心だ。  宅配便か何かだろうな――そう思いながらあんぱんを頬張った。実のところ、空腹は感じていたのだ。このあんぱんは素直に嬉しく思った。 「――透!」  ひどく焦った様子で愛が戻ってきた。 「何?」  あんぱんを齧りながら首を傾げた。何をそんなに慌てているのだろう?  愛はがしっとオレの両肩を掴んで言った。 「透、落ち着いて聞きなさいよ」 「は?」 「彼女が来たわよ」 「彼女?」 「そう彼女。武市鈴ちゃんってコ。彼女、あんたの『カノジョ』でしょ?」 「え――」  オレの手から、あんぱんがぽろりと落ちた。
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