第2話 涙雨

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 俯いてしまった鈴を見つめながら、ギュッと唇を噛んだ。  鈴の言うことはもっともだと思う。鈴はずっと、誰よりもオレを応援してきてくれた。怪我したこと、まずは彼女に一番に話すべきだった。実際、そうしようとはしたのだ。伝えようと思って、何度も携帯を手に取った。だけど、結局一文字も打てないままだった。  怪我したことを伝えて、大会出場が絶望的になったこと――それだけを簡潔に伝えればよかった。でも、できなかったのだ。  なんだか、自分がひどく惨めに思えて。   「……ごめん」  今も、その一言しか出てこない。  鈴はオレの言葉に、もどかしげに大きく首を振った。 「違う、ごめん。責めてるんじゃないの」 「え……?」  鈴は膝の上でぎゅっと手を握り締めた。 「違うんだ、透を責めたいんじゃなくて。あ……怪我が心配なのは、もちろん本当だよ。こんな時期だし、透がどんな気持ちでいるんだろうって考えたら……。でも、それだけじゃなくて、わたしが勝手に……怖くなったんだ」  意外な言葉だった。 「怖いって……?」  鈴は顔を上げてオレを見つめた。その顔が今にも泣き出しそうに見えて、ドキッとする。 「鈴?」 「……教室にね、いつも先にいるはずの透がいなかった。何かあったんじゃないかって不安に思ったところに、人から透の怪我のこと聞いて。わたし、何も知らなかったから、勝手にどんどん悪い方に想像して……動けないで苦しんでるんじゃないかとか、このまま学校に来なくなるんじゃないか、って……そんなわけないのに、そんなふうに怖くなった。顔見ないと安心できないって思った。だから、ここに来たのは……ごめん。透が心配だとか言いながら、本当は、自分が安心したかっただけ、なんだよね……」
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