第2話 涙雨

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 こんなに真っ直ぐな目で、彼女は何をどう思っているんだろう。まるで何かを探るように、じっとオレを見てくる。  だから、オレはあえて笑みを崩さなかった。  心の底にある失意を悟られることも、弱音を吐くことも、焦りを知られることも嫌だった。  たとえ見透かされていたとしても、情けない自分を曝け出したくはなかった。  彼女には、絶対に。  鈴が突然立ち上がった。 「え、鈴?」  鈴は何も言わないままテーブルを回って、オレのすぐ前に立った。そして真っ直ぐに見下ろして、言った。 「……透のバカ」 「えっ?」  不意に、オレの顔に影が落ちた。 「――!?」  ……思考停止。  数秒経って、ようやく唇に触れているのが彼女のそれだとわかった。  そっと触れるだけのキスだ。だけど、身動き一つできなかった。  鈴がゆっくりと離れた。オレは戸惑ったまま鈴を見返し――ハッとした。  突然のことに驚いたし、胸が尋常でないくらいドキドキした。だけど、鈴の表情を見た途端、そんな浮かれた気持ちは消えた。  どうして……どうして鈴はこんなに泣きそうな顔をしてるんだ?   「す――」  名前を呼ぼうとすると、今度は頭をぐっと抱き寄せられた。再び、オレの思考は止まった。  ただ、温かいと思った。そして、柔らかい、と。この柔らかさは、一体……   「――!」  瞬間的に、今自分の顔に触れているものが何かということに思い当たり、慌てた。   「す……!」  言葉が詰まる。離れようと思ったけれど、体がすっかり硬直してしまってできなかった。  鈴はオレの動揺には気付かないようで、さらに腕に力を込めた。   「わたし、強くなるから。透が甘えられるくらい」 「え……」  鈴の静かな声に、少しずつ動揺が静まっていった。  鈴の鼓動が伝わってくる。――トクントクン……通常より早くも、規則正しい拍動。  初めて直に感じる鈴の心臓の音が、心に沁み入っていく。  慰められているような気がして、無性に泣きたくなった。
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