第2話 涙雨

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 怪我から一週間以上が経った。  なんとか松葉杖の扱いも慣れ、登下校もバスを使うようになった。周りの奴らにとってももの珍しさが薄れてきたようで、オレとしては気持ちも楽になってきたところだ。  鈴との関係は特に変わりない。ただ、自転車通学だったオレがバスになったことで、鈴もそれに合わせてバスを利用するように変えてくれた。降りる場所は違うけど、方向は同じなのだ。  これまでは、彼女とは週に一度しか一緒に帰ることはなかったけど、今は毎日のように一緒だ。鈴と一緒にいる時間がこれまでより増えたことは、純粋に嬉しい。  だけど、授業が終わってすぐに家に帰る――そのこと自体にまだ慣れない。ついグラウンドの方を振り返ってしまう。立ち止ってしまいそうになる足を、意識して前に進めた。  この足が無事だったら。  そんな未練がましい思いがあることを、自分でも自覚している。だけど、そのことを鈴には悟られたくなかった。  彼女は怪我のことには触れない。配慮は忘れてはいないけど、過度に構うこともしなかった。それが彼女の自分への思いやりだとわかるからこそ、それ以上の気を使って欲しくなかった。
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