第2話 涙雨

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 そんなある日、オレは担任の沢村先生から呼び出しを受けた。  進路指導室で、先生と向かい合う。  先生は三十半ばの男性教諭だ。テニス部の顧問で真っ黒に日焼けしており、見るからに体育会系。でも、見た目に寄らず、担当は数学だ。  遠慮のない物言いと、裏表のなさそうなさっぱりした性格から、生徒からわりと人気のある先生だ。オレも普段、この先生に対しては平気で軽口を叩けるのだけど、こうして二人で向かい合うとなると勝手が違う。いつになく緊張した。 「すまんな、わざわざこっちに来てもらって。教室は邪魔が入るとも限らんからな。足、平気か?」 「大丈夫です」  この進路指導室は教室と同じ階にある。移動にさほど苦労はなかった。 「そうか。ではさっそく。進路のことなんだが――」  この部屋に呼び出された時点で話のおおよその見当はついていた。今さら、特に身構えることもない。   「まず、A大の推薦の件だが……」  先生は、その大学への推薦が難しいということを淡々と話した。A大は陸上競技の強豪大学だ。オレも、先日の大会の結果次第で、そこへの推薦が確実だったのだけど。 「わかってましたよ」  オレは冷静に答えた。  大会に出場できず結果を残せなかった自分には、もう挽回するチャンスはない。  たとえ今後復帰したとしても、怪我以前のような記録を出せるとは限らないのだし、そこまで自分の才能を評価してもらっていると自惚れてもいない。推薦の話が消えても当然で、ショックも受けなかった。
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