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「そうか。……つくづく怪我が悔やまれるな。惜しいよ」
先生が自分のことのように悔しそうに息を吐く。
ショックはなかったけど、先生をがっかりさせたのは申し訳なく思った。沢村先生はオレに期待してくれていた。推薦の話を積極的に推してくれたのも先生だった。
「ホント、ついてないっすよね、オレ」
オレはあえて笑って返した。あまりこの場を深刻な雰囲気にしたくなかったのだ。その気持ちが通じたかのように、先生が表情を緩めた。
「ほんと運のない奴だ。――で、その話が白紙に戻ったところで、だ。おまえの希望としてはどうなんだ? どこか行きたいところとかあるのか?」
「行きたいところ、ですか」
「まあ、道はいくらでもあるが、今のおまえの成績だと、この辺りの大学が狙えると思うが」
そう言いながら、いくつかの大学の名前の載った資料をオレの前に差し出した。全部体育関係の学科があるところだ。
「まあ、ここいらに限らず遠方に出る選択もいくらでもあるが。A大も一般で受けることは考えているか? となると、ちょっと頑張らんといかんが」
「うーん……」
正直、今は何も考えられない。
先生はしばらく待った末、「よし」と区切りを付けた。
「別に急かすつもりはないよ。まだ時間はあるし、親御さんとも相談しながらじっくり考えるといい。資料はやるから。相談はいくらでも乗るからな」
「どうも」
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