30人が本棚に入れています
本棚に追加
「よう!」
と、昇降口のところで声をかけて来たのは、慎吾だった。
「よう。って、慎吾、ここで何してんの?」
「おまえ待ってたの。バス停まで一緒に帰ろうぜ」
珍しい誘いだ。
「いいけど。それでわざわざ待ってたの? 何、気持ち悪い」
「ひでえ。いいじゃん、たまにはさ。ところで、おまえ呼び出し食ったんだって?」
「別に悪さして呼ばれた訳じゃないからな。例の、推薦の話が無くなったって話」
慎吾はオレに推薦の話があったことを知っている。隠すことなく言うと、慎吾は「はあ」とため息をついた。
「やっぱそうかぁ。痛いなぁそれ」
オレは軽く笑った。
「わかりきってたことだけどね。――って、まさか、おまえそれ心配して待ってたんじゃないよな」
「まっさか。まあ、気になってたのは否定しないけど」
慎吾はあっさりそう言って頭を掻く。余計な心配だと思いつつも、そんな慎吾の気遣いは嫌じゃない。
「ところで慎吾、部活は?」
慎吾は呆れたように目を見開いた。
「ばっか。もう引退したっつーの。この前の大会が最後だったっしょ」
「――あ、そっか」
オレは今さらのようにそのことを思い出した。全国大会に進めなかった三年は、あの地区大会を最後に引退だったっけ。
「うちの部からインターハイ行けたやついなかったから、全員揃って仲良く引退だ。透、恒例の挨拶にも来れなかったもんな」
「あー悪かったかな」
「いや、別に気にするこたねぇだろ。いつでも顔出せる時に行けばいいんだろうし。コーチも待ってるってよ」
「うん」
最初のコメントを投稿しよう!