第2話 涙雨

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「おまえ、器用そうに見えて、実はすげえ不器用だったのな」 「はぁ?」 「まあ、いろいろ複雑なのはわかるけどね」  慎吾が足を止めた。校門前のバス停に着いたのだ。慎吾はオレに向き直り、ピッと人差し指を付きたてた。 「そうそう、俺から一つアドバイス。『おまえもたまには自分に正直になってみたらいいよ』」 「!」  聞き覚えのある言葉にぐっと言葉に詰まる。慎吾は「じゃあな」とご機嫌に手を振って歩いて行った。  ……なんだ、あいつ。  いつもからかわれていることへの仕返しか?  なんだか、いろいろなことが頭を巡って、頭の中がごちゃごちゃする。  進路のことや鈴のこと。  大会の記録と自分のベスト記録。  悔しくないのか、だって? それを聞いてどうするんだよ。 『そんなんだから鈴ちゃんも――』  鈴も? その後に言いたかったことは何なんだ? 『おまえもたまには自分に正直になってみたらいいよ』 「なんだよ、それ……」  胸の中がモヤモヤする。 「?」  突然、頬に何かが落ちてきて空を見上げた。 「……雨かよ」  ポツポツと振り出したそれに舌打ちを打つ。  まるで、心の中を映したような空模様だと憎らしく思った。  
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