第3話 吹き荒れる風

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 雨が好きではなかった。  子どもの頃からそうだ。家の中でじっとしているよりも外に出て体を動かして遊ぶ方が好きだったから、雨降りは気が滅入った。  室内の遊びでは物足りない。  それは陸上を始めてからも同じで、屋内での練習はどこか物足りなかった。もちろん、屋内でもそれなりの楽しみを見つけることはできたけど、やっぱり青空を恋しく思う。  だから、当然、梅雨という季節が好きじゃない。もともとそうなのに、今年のこの時期は、ことさら憂鬱だった。  松葉杖では傘もさせない。レインコートを着用するにしても、不便なことこの上ない。  季節を裏切らない空模様に、オレはため息を禁じ得なかった。
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