第3話 吹き荒れる風

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「はっきり言うね。もうちょっとオブラートに包むとかさ」  愛はカラカラと笑った。 「オブラートって。私があんたに気を使ってどうすんのよ。なに? あんた実はへこんでたりする?」  自室に戻ろうとしていたのだけど、足を止めて横の壁に寄りかかった。 「別にへこんじゃいないけどさ。全く平気ってわけでもない」 「なるほど……かなり落ち込んでるんだ」 「は?」  ムッとして睨み返した。 「誰もそうは言ってないだろ」 「そう?」  澄ました顔でバナナを剥き始めた姉を見て、それ以上の反論も虚しくなってやめた。ひとつため息をつき、大人しく部屋に戻ろうと体勢を整える。そこへ、愛がまた話しかけてきた。 「ねえ透、足痛い?」 「え?」  怪我をしてからもう一月近く経つ。なんで今さらそれを聞く。 「今はそんなに痛くないけど……なんで?」 「別に。アキレス腱って、切ったらどれぐらい痛いんだろうかとか気になってさ」  そう言いながら、もぐもぐとバナナを頬張る愛は、オレの方を見てすらいない。
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