第1話 晴れ渡る空

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「ところで、順調みたいだね」  鈴が振った話題がオレの高跳び(ハイジャン)のことだと気付き、気持ちを切り替えて頷いた。 「うん。ここんとこ体が軽くてさ。この調子でいくと、自己ベストも更新できそうな気がするよ」  そう言うと、鈴は自分のことのように嬉しそうな顔をする。 「いいとこまでいけそう?」  オレは半月後に高校最後の競技大会を控えている。そのことを鈴は言っているのだろう。  一瞬の躊躇の後、オレは言った。 「実は狙ってる」  鈴はきょとんとした顔でオレを見上げた。 「何を?」 「何をって……」  はっきり言うのは、かなり照れてしまうんだけど。 「……優勝。そして全国」  どんな顔するだろう、と鈴を窺う。鈴はその言葉を飲み込むように目を何度か瞬かせた後、パアッと顔を輝かせた。 「そっかそっかぁ! うん、きっと透ならやれるだろうなぁ」  大袈裟じゃない口調でさらりとそんなことを言ってくれる。そして、握手を求めるように右手を差し出してきた。 「頑張れ。わたし応援するから」  オレはその手をガシッと握り返した。 「おう、任せといて!」  この場の勢いだけではない、確かな自信が胸に満ちてくる。  このコをもっともっと笑顔にしたい。オレが鈴を笑顔にするんだ――そう固く心に誓った。
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