第3話 吹き荒れる風

9/33
前へ
/155ページ
次へ
     さすがに、薄々気付いていた。たぶん、この前慎吾が言おうとしたのはこういうことなのだろうと思う。  オレってそんなだろうか?  自分ではそういうつもりは全くないし、鈴にそれを確かめてもいない。  鈴は前と変わらない様子で接してくれているし、そんな鈴に「心配してる?」などと改めて聞くような事でもないと思う。  もしそれを聞いて「うん」と答えられても、やっぱり自分は「大丈夫」としか言えない。今と何かが変わるとは思えなかった。  考えれば考えるだけ、わからなくなってくる。  オレは今のままでいいと思う。   ――のに、どこかうまくいかない気がするのは何でだろう。  突然、机の上に置いた携帯電話が振動を始めた。手を伸ばしてそれを取り、着信を確かめる。思わず目を丸くした。 「鈴?」  どうしてこの時間に、と思ったのは一瞬、時計を見て納得した。今は中休みだ。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加