第3話 吹き荒れる風

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 ――そもそもは、鈴を部屋に通す気はなかったのだ。  さすがに、玄関先だけで済ますつもりもなかったけど、鈴が来たらこの前のように居間に通そうと考えていた……が。  オレよりいち早く鈴の応対に出た愛が、有無を言わせぬ勢いで、勝手に鈴をオレの部屋へと案内してしまったのである。  そりゃもう、めちゃくちゃ焦ったものの、鈴を追い出すこともできず、こうして部屋で向き合うことになってしまった。  予定外のことではあったけど、日頃から物を部屋に貯めこまないことが幸いして、散らかっていて恥ずかしいという思いはしなくても済んだ。脱ぎ捨ててあった服を、そっとベッドの布団の中に隠したぐらいだ。  ――それにしても、ただ自分の部屋に彼女がいるというだけで、なんでこんなに緊張してしまってるんだろう、オレ。  密かに深呼吸をした。  大丈夫、いつも通りだ。別に、何もやましいことなんかないのだし。  平常心だ、平常心……うん。
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