第3話 吹き荒れる風

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「え、えーっと。わざわざ来てもらってありがとう。雨、大変だったろ?」 「ううん、大丈夫だった。だいぶん小降りになってきたところだから」  確かに、窓を叩く雨の音は随分穏やかになっていた。  鈴がオレを上目遣いに窺う。 「今くらいの雨だったら、透も学校来た?」 「え? やー……どう、かな」  返答に困っていると、鈴はクスッと笑った。 「ごめんごめん。小雨でも大変だもんね。滑ったりしたら大変だし。うん、無理しない方が正解だね」   鈴は鞄の中をごそごそ探りながら、何気ないように話し続ける。 「雨はやだね。早く梅雨明けたらいいのになあ。透が来ないと寂しいし」  オレは思わず目を丸くした。 「寂しい?」 「うん。みんなも言ってる。透、今日も休みかぁって。つくづく、透って人気者だと思うよ」  なんだ、みんな、か。 「そうかな。まぁ、みんな同情してくれてるだけだろ」  苦笑するオレを、鈴が顔を上げてチラリと見る。でもまたすぐに鞄の中に目を戻して、プリントとノートを数冊取り出した。
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