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「……聞きたいことって、何?」
鈴からの言葉はすぐに返ってこなかった。
じっとオレを見たまま、固く唇を引き結んでいる。どう話を切り出そうか迷っているようにも見える。
だから、オレは先を促すことはしなかった。彼女が話してくれるのを辛抱強く待つことにする。
そのまま、しばらく無言の時間が過ぎた。
不意に、ピカッと窓の外が光った。
「!」
反射的に外を見る。少し遅れてゴロゴロと地鳴りのような音――雷だ。それを合図に、雨がまた強く降り始めた。
「……また酷くなりそうだね」
そんなオレの呟きにも鈴からの反応はない。オレも答えを期待して呟いたわけじゃないから構わなかった。
「透」
ようやく鈴が口を開いた。オレは窓から鈴に視線を戻す。
「うん」
「透……やっぱり無理してない?」
ああ、やっぱりその手の話か……。
驚きはしなかった。薄々予想はついていたいたから。
「鈴ちゃん、前もそんなこと聞いたよね」
オレは落ち着いて答えた。
「オレ、無理なんてしてないよ?」
「……」
黙って見返してくる鈴は、納得など全くしていない顔だ。
何でそんなに頑なになっているんだろう。
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