第3話 吹き荒れる風

17/33
前へ
/155ページ
次へ
 全部、自分の中で折り合いをつけたことだった。  大会の欠場も、怪我したんだからどうしようもない、仕方ないことだと、懸命に自分を納得させた。ついてなかったと笑うことで、心を軽くした。  ――そうするのが一番楽だったから。無理をしたわけじゃない。  でも、そんな思いをいちいち言葉に出して説明することは、ひどく難しかった。  鈴はなおも続ける。 「足だってきっと痛いはずなのに、わたしは透から『痛い』の一言も聞いたことない。松葉杖だって不便そうなのに、愚痴一つこぼさない。推薦の話が無くなったことも、悔しいとも辛いとも言わなかった。ただ仕方ないねって笑ってた」 「……」 「透は自分で言ってるように、無理してるつもりはないのかもしれない。だけど、わたしはそんな透見るのが……時々辛いんだよ。……ごめん、こんなこと……すごく勝手なこと言ってるよね……」  鈴は項垂れるように俯いた。  オレはそんな鈴をただ黙って見つめた。  動揺のあまり、返す言葉が見つからなかった。  ここまで……?  オレはここまで鈴に心配をかけていたのか。辛い、と思われるほどまで。  だけど、では自分はどうすればよかったんだろうか。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加