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全部、自分の中で折り合いをつけたことだった。
大会の欠場も、怪我したんだからどうしようもない、仕方ないことだと、懸命に自分を納得させた。ついてなかったと笑うことで、心を軽くした。
――そうするのが一番楽だったから。無理をしたわけじゃない。
でも、そんな思いをいちいち言葉に出して説明することは、ひどく難しかった。
鈴はなおも続ける。
「足だってきっと痛いはずなのに、わたしは透から『痛い』の一言も聞いたことない。松葉杖だって不便そうなのに、愚痴一つこぼさない。推薦の話が無くなったことも、悔しいとも辛いとも言わなかった。ただ仕方ないねって笑ってた」
「……」
「透は自分で言ってるように、無理してるつもりはないのかもしれない。だけど、わたしはそんな透見るのが……時々辛いんだよ。……ごめん、こんなこと……すごく勝手なこと言ってるよね……」
鈴は項垂れるように俯いた。
オレはそんな鈴をただ黙って見つめた。
動揺のあまり、返す言葉が見つからなかった。
ここまで……?
オレはここまで鈴に心配をかけていたのか。辛い、と思われるほどまで。
だけど、では自分はどうすればよかったんだろうか。
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