第3話 吹き荒れる風

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 オレは、浩太のように、絶対に彼女を不安にさせたりはしない――付き合い始めてから、ずっとそう思っていた。  鈴には笑っていて欲しい。  そのためにはまず自分が笑っていようと思った。  たとえどんな状況であっても、鈴には心配なんて絶対に掛けない。  まさかこんな怪我を想定していたわけではないけど、ずっとそんなふうに思っていた。  それは誓いにも似た決意だった。    ……だけど、結局はその決意が、逆に鈴に「辛い」と言わせることになったということなんだろうか。  ――頭が、混乱する……。  浩太のこと――そういう意味で鈴の気持ちを疑っているわけじゃない。忘れさせようと思って、笑っていたわけじゃない。    だけど、それをどう伝えたらいい?   どうしたらいい? どうしたらわかってもらえるだろう。  ……答えは見えず、苛立ちが沸き上がった。  外の雷が激しさを増す。雨に加え風も出てきたのか、時折窓がガタガタと激しく音を立てた。
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