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苛立っているのは自分に対してだ。決して鈴にではない。
だけど、抑えることが出来なかった。
「わかんないよ……鈴は、オレにどうして欲しいわけ?」
「わたしは……」
「オレが悔しい痛い悲しいって泣きつけば、鈴は安心すんの?」
「そうじゃない!」
鈴は激しく首を振る。
「わたしは……少しでも透の力になりたいって……なのに、わたしの方が気遣われてるのが――」
いきなり、ドンッ! と地面を割るような衝撃音が響き渡った。その後ビリビリと空気を裂く音が長く続く。近くに落ちたかのような激しい雷鳴。
その余韻が消えた後の静寂に、鈴が改めて言葉を乗せた。
「……透。わたし、そんなに頼りにならない? わたしでは透の力になれない?」
縋るようなその言葉に、イライラが――増した。
「だから……オレ、いつも言ってるだろ。オレは鈴が一緒にいてくれるだけで十分嬉しいし――」
「そんなの! ただのお人形じゃん!」
「え――」
人形……?
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