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「何言って……」
「透にとってわたしは何? 一緒にいれば満足なだけの存在? だったらお気に入りの人形でも抱いていればいいっ」
「鈴!」
オレは強く鈴を遮った。その勢いで鈴の体を床へと押し倒してしまう。怒りで紅潮している鈴を間近で見下ろしながら、どうしようもなく苛ついていた。
人形とか、そんなバカげたことを言う鈴に。
――言わせてしまった自分に。
「人形なんて思ったことない。人形にこんなことしたいとは思わない」
目を見開いてオレを見上げていた鈴の唇に、自分のそれを重ねた。
「やっ、んっ……!」
当然のように、鈴は激しく抵抗した。それでもオレは鈴を逃がさなかった。更に深く唇を重ねて、奪う。
そのうち鈴は抵抗を止め、目を閉じてオレの唇を受け止めた。
何の感動もない、長いキス。
そんな冷たいキスの後、顔を離したオレを鈴は真っ直ぐに見つめてきた。
ひどく冷静な目で。
ふと思う。
鈴のその目に、自分は今どのように映っているのだろう。
一人で焦って苛ついて。
挙句の果てに乱暴なことまでして。
……オレのこと、嫌いになっただろうか。
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